介護保険サービスとは

親の体調が悪くなったり、入院したり、これから先のことが心配になったとき、よく耳にするのが「介護保険」という言葉です。けれども、介護保険という言葉は知っていても、実際にはどんな仕組みなのか、誰が利用できるのか、どんなサービスがあるのか、詳しく知っている方は意外と少ないものです。
この記事では、これから親の介護を考え始めた方や、実際に介護が必要になったときに備えて情報を集めたい方に向けて、介護保険の基本的な仕組みや利用方法、費用の目安まで、分かりやすく解説していきます。介護保険は「困ったときの助け舟」です。ぜひ一歩踏み出す参考にしてみてください。

目次

1.介護保険制度とは?

1-1介護保険はどんな人のための制度?

介護保険は、加齢や病気などで日常生活に介護が必要になった人を、社会全体で支える仕組みです。高齢になると、誰でも介護が必要になる可能性があります。介護は本人にとっても家族にとっても大きな負担ですが、介護保険制度を利用することで、必要なサービスを受けたり、費用の負担を軽減したりすることができます。
介護保険を支えているのは、40歳以上のすべての人が支払う保険料です。65歳以上になると、保険料は年金から自動的に差し引かれることが多く、知らないうちに支払っている人も少なくありません。こうして集めた保険料と税金を財源に、介護が必要な人へのサービスが提供されています。
ただし、保険料を支払っているからといって、すぐに誰でもサービスを使えるわけではありません。実際にサービスを利用するためには、一定の条件を満たす必要があります。

1-2利用するための条件とは?

介護保険を利用するためには、まず「要介護認定」という手続きを受ける必要があります。これは、自分がどれくらいの介護や支援を必要としているかを市区町村が審査し、「要支援1・2」または「要介護1~5」といった区分を決めるものです。この認定がないと、介護保険のサービスを受けることはできません。
また、40歳から64歳の人は、たとえ介護が必要になっても、老化が原因とされる特定の病気でなければ介護保険は使えません。たとえば脳血管疾患や初期の認知症など、一定の病気に限られているのです。こうした条件があるため、「自分の親は介護保険を使えるのか」という疑問が生まれるのも無理はありません。

2.介護保険の対象者

2-1第一号被保険者(65歳以上)

介護保険の第一号被保険者とは、65歳以上のすべての人を指します。加齢による心身の衰えや病気など、老化が原因で介護が必要になった場合には、介護保険のサービスを利用できます。つまり、65歳以上の人であれば、原因を問わず要介護状態と認定されれば保険のサービスを使えるということです。
たとえば「最近転びやすくなった」「食事や入浴が一人では難しくなった」というような日常生活の支障が出てきた場合には、介護保険を利用することで訪問介護やデイサービスなどを受けられる可能性があります。ただし、実際に利用できるかどうかは要介護認定の結果によって決まるため、65歳以上だからといって必ずサービスが受けられるわけではない点に注意が必要です。

2-2第二号被保険者(40~64歳)

一方、40歳から64歳の人は第二号被保険者と呼ばれます。この世代は、介護保険料を支払っているものの、すぐに誰でも介護保険を使えるわけではありません。利用できるのは、老化が原因とされる「特定疾病」によって介護が必要になった場合に限られるのです。
特定疾病には、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)、初老期認知症、パーキンソン病、関節リウマチなどが含まれます。つまり、交通事故など老化と無関係な原因で介護が必要になった場合は、介護保険は利用できません。このため、親がまだ65歳未満で介護が必要になったときには、まず特定疾病かどうかを確認することが大切です。

2-3介護保険の対象外になる場合もある

介護保険はとても頼もしい制度ですが、誰でもすぐに利用できるわけではありません。たとえば65歳以上でも、日常生活に支障がほとんどない場合には「非該当」と判定されることがあります。こうなると介護保険のサービスは使えません。
また、40歳から64歳の人でも、介護が必要な理由が老化とは関係ない場合、たとえば事故によるケガや病気などの場合には介護保険の対象外です。このように「65歳だから絶対に使える」とは限らない点を知っておくことが大切です。

3.介護保険で受けられるサービスとは

介護保険で利用できるサービスは、大きく分けて在宅サービスと施設サービスがあります。どのサービスを利用するかは、本人の状態や希望、家族の状況によって異なります。

3-1 在宅サービス

訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護は、介護職員(ホームヘルパー)が自宅に訪問し、日常生活を支援してくれるサービスです。支援の内容は大きく二つに分かれています。

一つ目は「身体介護」で、入浴、排せつ、食事の介助など、直接体に触れて行うお世話です。例えば、ベッドから車いすへの移乗の手助けや、着替えの介助などもこれに含まれます。

二つ目は「生活援助」で、掃除や洗濯、買い物、調理など家事をサポートしてくれるものです。ただし、生活援助では家族全員分の家事は対象外で、あくまで利用者本人の日常生活に必要な範囲が基本です。

訪問介護は、家族が日中不在で手が回らないときや、ひとり暮らしの高齢者が安全に生活を続けるためにとても役立つサービスです。

デイサービス(通所介護)

デイサービスは、高齢者が日中に施設へ通い、入浴や食事、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを受けられる日帰りのサービスです。
自宅にこもりがちな高齢者にとっては、外出の機会ができることで気分転換になり、孤立を防ぐ効果もあります。また、他の利用者との交流や軽い運動、趣味活動を通じて、心身の健康維持を図ることができます。
家族にとっても、数時間〜1日の間介護から離れることができるため、身体的にも精神的にも大きな助けになります。施設によっては送迎サービスがあり、通うことが難しい人でも安心して利用できます。

訪問看護・訪問リハビリ

訪問看護は、看護師が自宅を訪問して医療的なケアを行うサービスです。たとえば、血圧や体温の測定、病状の観察、傷の処置、薬の管理など、病院に行かなくても自宅で安心して療養できるよう支援してくれます。医師の指示のもとに行われるため、医療ケアが必要な人にとってとても心強い存在です。
訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、リハビリを提供するサービスです。たとえば、歩く練習、関節の動きの改善、日常生活動作の訓練などを行います。病院を退院した後、家での生活に慣れるために利用する人も多いです。
どちらも、医師の指示が必要となるため、利用したいときは主治医やケアマネジャーに相談するのが良いでしょう。

短期入所(ショートステイ)

短期入所、いわゆるショートステイは、介護をしている家族が病気になったり、旅行や冠婚葬祭で家を空ける必要があったりする場合に、一時的に高齢者を施設で預かってもらうサービスです。
施設に数日から1~2週間程度泊まり、食事や入浴、排せつの介助など、日常生活全般のケアを受けることができます。特に、在宅での介護を続ける家族にとって、心身を休める「レスパイトケア」として非常に大切な存在です。
施設によって部屋の種類(多床室か個室か)や設備が異なるため、費用にも差があります。利用を考える際は、事前にケアマネジャーと相談し、施設見学をするのがおすすめです。

3-2 施設サービス

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム、通称「特養」は、介護が常に必要で、自宅での生活が難しい高齢者が入所する施設です。入所すると、食事、入浴、排せつなど日常生活すべてにわたり24時間体制で介護を受けることができます。

特養は公的な施設で費用負担が比較的安く抑えられるため人気が高く、申し込みをしてもすぐに入所できないことも多いのが現状です。特に都市部では待機者が多く、数ヶ月から数年待つケースも珍しくありません。

入所できるのは原則「要介護3」以上の人が対象ですが、特例的に入れる場合もあるため、詳しくはケアマネジャーや施設に確認するのが良いでしょう。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設、通称「老健」は、病院を退院したばかりの人などが、自宅に戻るためのリハビリを集中的に受ける施設です。医師や看護師、理学療法士など多職種が協力して、医療ケアとリハビリを提供します。

老健の大きな特徴は「在宅復帰を目指す施設」という点です。長期入所は原則ではなく、数ヶ月の入所を経て、自宅での生活に戻れるようサポートします。ただし、在宅に戻る目処が立たない場合は、退所を促されることもあります。

費用は特養より高いことが多いですが、医療ケアやリハビリが充実しているため、家に帰る準備をしたい人にはとても適した施設です。

介護医療院

介護医療院は、医療と介護を一体的に受けられる施設で、主に長期療養が必要な高齢者のための場所です。医療ケアが常に必要で、自宅での生活が難しい方が入所対象となります。

介護医療院では、医師が常駐し、看護師や介護職員が日常生活を支えます。また、リハビリや栄養管理、口腔ケアなど、健康面のサポートも行われるため、医療面での安心感が非常に高い施設です。

費用はやや高額ですが、病院のように医療体制が整っており、病状が安定しない人でも長期的に療養できるのが大きな特徴です。家族としても、安心して預けられる場所と言えるでしょう。

3-3 介護保険でできること・できないこと

介護保険では多くのサービスが受けられますが、できること・できないことがはっきりと決まっています。たとえば、掃除や洗濯、買い物の代行など生活援助は認められますが、家族の分の食事作りや大掃除のような特別な作業は対象外です。

また、入院中の病院での介護や医療行為そのものは介護保険では賄えません。何が介護保険の範囲内で、何が自己負担になるのかを知っておくことはとても大事です。もし分からないときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると安心です。

4.介護保険を利用するには

4-1利用までの流れ

介護保険を利用するには、いきなりサービスを申し込むことはできません。最初にやるべきことは、市区町村の役所や地域包括支援センターへ相談に行くことです。そこでは「介護保険を使いたい」と伝えると、申請の仕方や必要な書類を教えてもらえます。

申請をすると、市区町村の職員や専門の調査員が自宅に訪問し、本人の生活の様子や身体の状態を調べる「認定調査」が行われます。あわせて、かかりつけ医からの意見書も提出されます。その結果をもとに、審査会が「どの程度の介護が必要か」を判断し、「要支援1・2」または「要介護1~5」などの認定結果が通知されます。

この認定が出たあとに、具体的にどんなサービスをどれくらい使うかを決めるのがケアプランの作成です。ケアプランが決まると、ようやく介護保険のサービスを利用できるようになります。つまり、介護保険を使うには、まず「申請」→「調査」→「認定」→「ケアプラン作成」という順番を踏む必要があるのです。

4-2要介護認定とは

「要介護認定」というのは、介護保険を利用するための一番大事なステップです。どれだけ介護が必要なのかを客観的に判断し、サービスを使うための基準を決めるものです。

認定は、市区町村が行います。具体的には、認定調査員が自宅を訪問し、食事やトイレ、入浴など日常生活がどれくらいできるかを細かくチェックします。本人や家族からの聞き取りも重要なポイントです。そして、その結果と医師の意見書をもとに、介護認定審査会が「要支援」か「要介護」か、さらにその度合い(1〜5段階)を決めます。

認定を受けない限り、介護保険のサービスは利用できない仕組みになっています。もし結果に納得できない場合は、再調査を申請することも可能です。認定が出るまでには通常1ヶ月ほどかかるので、早めの行動が大切です。

4-3ケアプランとは

要介護認定を受けたあとは「ケアプラン」という計画を立てることになります。ケアプランとは、本人や家族の希望、介護が必要な度合いをもとに、どのサービスをどのくらいの頻度で利用するかを具体的に決める計画書のことです。

ケアプランの作成は、ケアマネジャー(介護支援専門員)が担当します。ケアマネジャーは、本人や家族の話をじっくり聞きながら、最適なサービスの組み合わせを考えてくれます。訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、さまざまなサービスを組み合わせることで、本人がなるべく自宅で生活を続けられるようにサポートするのが目的です。

ケアプランの作成自体は無料です。作ったあとも状況が変われば、何度でも見直すことができるため、遠慮せずに相談することが大切です。

4-4どこに相談すればいい?

介護保険を使うとき、「どこに相談すればいいのか分からない」という人はとても多いです。そんなときの頼れる窓口が「地域包括支援センター」です。

地域包括支援センターは、市区町村ごとに必ず設置されていて、介護や高齢者に関する相談を無料で受け付けています。「親の物忘れが増えて心配」「介護保険を使いたいが手続きが分からない」など、どんな小さなことでも相談してOKです。専門のスタッフが親身になって話を聞き、必要な手続きや制度の利用方法を教えてくれます。

もし地域包括支援センターがどこにあるか分からないときは、市区町村の役所に電話すれば教えてもらえます。早めに相談することが、介護をスムーズに進めるための一番の近道です。

5.介護保険サービスの費用とは

自己負担は何割?(1割・2割・3割の基準)

介護保険のサービスを利用するとき、多くの方が気になるのが「結局いくら払うのか」という自己負担額です。実は、介護保険では利用者が支払う割合が所得によって決まっており、人によって負担割合が異なります。

基本的には、多くの人がサービス費用の1割を自己負担します。しかし、現役並みの所得がある方や高所得者と判断される場合は、自己負担が2割や3割に引き上げられます。具体的には、前年の合計所得金額や年金収入などを基準に市区町村が判断します。

例えば、同じデイサービスを利用しても、1割負担の人なら1,000円で済むところが、3割負担の人は3,000円かかるということです。このように、負担割合が変わると家計への影響が大きいため、自分や家族がどの負担割合に該当するかを確認しておくことが大切です。

サービス別の利用料金

介護保険を利用するとき、サービスによって費用はさまざまです。どのくらいのお金がかかるかを知ることは、家計のやりくりや将来の備えにとってとても重要です。以下の表は、主なサービスの自己負担額の目安をまとめたものです。実際の料金は地域や事業所によって異なるため、参考程度に見てください。

サービス名自己負担額(目安)備考
訪問介護(身体介護)約250~500円/30分入浴、排せつなどの介助
訪問介護(生活援助)約200~300円/30分看掃除、洗濯、買い物な
デイサービス(通所介護)約700~1,200円/日食費やレクリエーション代は別途
訪問看護約300~1,000円/回看護師の訪問、医療的ケア
訪問リハビリ約300~800円/20分理学療法士などが訪問
短期入所(ショートステイ)約2,000~5,000円/1泊2日部屋タイプによって変動
特別養護老人ホーム約70,000~120,000円/月部屋代・食費込み、所得により減免あり
介護老人保健施設約80,000~150,000円/月リハビリ中心の施設
介護医療院約80,000~160,000円/月医療ケアを含む長期療養施設

この表を見て分かる通り、在宅サービスは比較的安い金額で利用できることが多いものの、回数が増えると負担は大きくなります。一方、施設サービスはまとまった金額がかかりますが、生活全般を任せられる安心感があります。費用の面で迷うときは、必ずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

高額介護サービス費制度とは?

介護サービスをたくさん利用した場合、自己負担が高額になってしまうことがあります。そんなときに助けになるのが「高額介護サービス費制度」です。

この制度は、同じ月の中で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超えた分が後から払い戻されるという仕組みです。たとえば、上限額が月額44,400円と決まっている人の場合、どんなにサービスを使っても、負担はそれ以上にはなりません。

ただし、この上限額は人それぞれで、所得や世帯の状況によって異なります。低所得の人ほど上限が低く設定されており、経済的に大きな負担を抱えないよう配慮されています。

「高額になりそうで不安」という方は、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談することで、自分がどのくらいの上限額なのかを確認できます。知っているか知らないかで大きく差がつく制度なので、ぜひ覚えておきたいポイントです。

6.抑えるべき介護保険利用のポイント

地域包括支援センターへ相談する

介護保険を利用しようと思ったとき、どこに相談したら良いのか分からずに戸惑う方はとても多いものです。そんなときに真っ先に頼りになるのが、地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは、高齢者やその家族のために各市区町村が設置している公的な相談窓口で、利用は無料です。「親が最近物忘れをする」「介護保険ってどんな手続きが必要なの?」といった、どんな小さな相談でも受け付けています。

スタッフは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門家で構成されており、それぞれの立場から最適なアドバイスをしてくれます。介護保険の申請だけでなく、医療や生活に関する悩みも幅広く対応してくれるので、まずは気軽に相談してみることが大切です。

もし地域包括支援センターがどこにあるか分からない場合は、市役所や区役所に問い合わせれば教えてもらえます。

早めの情報収集

介護はある日突然必要になることが少なくありません。たとえば親が転倒して入院し、そのまま介護が必要になったり、認知症が急に進んだりすることがあります。そんなとき、全く準備がない状態だと慌ててしまい、どこに相談すればいいか、何をすればいいか分からなくなってしまうことが多いです。

だからこそ、介護が現実になる前に、早めに情報を集めておくことが非常に大切です。介護保険制度の仕組みやサービスの種類、費用の目安などを知っておけば、いざというときにスムーズに動くことができます。また、地域のサービスや窓口の場所を把握しておくだけでも大きな安心感につながります。

「まだ親は元気だから大丈夫」と思うかもしれませんが、早めに知識を持っておくことで、将来の選択肢が広がり、家族全員の負担を軽減することができるのです。

家族だけで抱え込まない

介護は、本人にとっても家族にとっても大きな負担です。特に家族が仕事や育児をしながら介護を続けるとなると、身体的にも精神的にも疲れがたまりやすく、介護うつや体調不良を引き起こすことも珍しくありません。

「家族だから自分が頑張らなきゃ」と思い込み、一人で抱え込んでしまう方は多いですが、介護保険をはじめとした公的なサービスを活用することは決して悪いことではありません。むしろ、介護保険は家族の負担を減らし、本人が安全で安心した生活を送るために作られた制度です。

介護保険のサービスを上手に利用することで、家族が少しでも休息を取れたり、仕事を続けられたりする環境を作ることができます。また、介護に悩んだときは地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するのが一番です。家族だけで頑張ろうとせず、周囲の力を借りることが、介護を長く続けるための大切なポイントです。

目次